クラウド会計導入ガイド:導入期間・失敗しないための準備・成功のコツを徹底解説
I. はじめに:クラウド会計導入、どれくらいかかる?
「クラウド会計」と聞くと、なんだか難しそうに感じるかもしれませんね。でも、実は多くの会社や個人事業主が、日々の「お金の管理」を楽にするために使っている便利なツールなんです。
この「クラウド会計」を新しく使い始めるには、どれくらいの期間が必要なのでしょうか?
結論から言うと、その期間は会社によってさまざまです。一般的な中小企業では3ヶ月から9ヶ月くらい、従業員がたくさんいる大きな会社だと1年から1年半以上かかることもあります。
なぜこんなに期間に差が出るかというと、これは単にソフトをパソコンに入れるだけの作業ではなく、会社の持つデータや業務のルールを入れ替える、大きな「引越し」のようなものだからです。
この引越しを成功させるには、ただ便利なソフトを選ぶだけではダメで、「なぜこのソフトを導入するのか」という目的をみんなで共有し、協力して進めることが何よりも大切なのです。
このガイドでは、クラウド会計をスムーズに導入するための流れや、よくある失敗例とその対策を、誰にでもわかるようにやさしく解説していきます。
II. クラウド会計導入のスケジュール:会社の規模で変わる引越しの時間
クラウド会計の導入にかかる期間は、会社の規模や仕事のやり方によって大きく変わります。
- 個人事業主や小さな会社(2ヶ月〜6ヶ月)
- 目的が「確定申告を楽にする」「お金の流れをいつでも見られるようにする」など、シンプルで明確なことが多いので、比較的短期間で導入できます。
- 中小企業(3ヶ月〜9ヶ月)
- これまでのやり方を変えたり、古いデータを引越しさせたり、他のシステム(お給料計算など)と連携させたりするので、少し時間がかかります。
- 大きな会社(1年〜1年半以上)
- 多くの部署や従業員が関わり、複雑なシステムとつなぐ必要があるため、導入にはじっくりと時間をかけるのが一般的です。年商1億円規模の中堅企業でも、全体の計画を立てる段階から考えると、全体で18ヶ月以上かかるケースもあります。
導入期間を決めるポイント
引越しの期間が長くなるかどうかは、以下のポイントで決まります。
- 会社の規模と複雑さ: 従業員や部署が多いほど、また事業内容が複雑なほど、話し合いや設定に時間がかかります。
- データの量と形: 今まで使っていた古いデータ(例えば過去3年分)を、新しいソフトで使える形にする作業が必要です。データの量が多かったり、形がバラバラだったりすると、手間と時間がかかります。
- 他のシステムとの連携: 別のソフト(例えば給与計算ソフトや販売管理ソフト)とクラウド会計をつなげる場合、その設定にも時間がかかります。
- 社内の協力体制: プロジェクトを進める人がいなかったり、みんながITに詳しくなかったりすると、予定通りに進まない可能性があります。
以下の表に、会社の規模ごとの導入期間の目安をまとめました。
会社の規模別 クラウド会計導入期間の目安と影響要因
| 会社の規模 | 標準的な導入期間 | 期間に影響する主なポイント |
| 個人事業主・ 小規模法人 | 2ヶ月~6ヶ月 | 財務状況の可視化、確定申告の効率化など、 単一の明確な目的を持つことが多い。 |
| 中小企業 | 3ヶ月~9ヶ月 | 既存システムからのデータ移行、業務フローの再構築、 他部門との連携。 |
| 中堅企業 | 12ヶ月~19ヶ月 | 複数の部門・業務プロセスへの展開、独自の分析要件、 トップマネジメントの承認プロセス。 |
| 大企業 | 1年から1年半以上 | 大規模なシステム連携(ERPなど)、高度なカスタマイズ、 全社的な業務フローの抜本的見直し。 |
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III. クラウド会計導入の5つのステップ:スムーズな引越しの進め方
引越しを成功させるには、行き当たりばったりではなく、計画的に進めることが大切です。ここでは、導入の各ステップと、それぞれのポイントを解説します。
ステップ1:計画を立てる(約1ヶ月~1.5ヶ月)
「とにかく便利そうだから」という理由だけで導入するのは危険です。このステップでは、「なぜクラウド会計を導入するのか」という目標を具体的に決めます。
目標の例:
- 「経理の作業時間を半分に減らす」
- 「いつでも会社の経営状況をチェックできるようにする」
- 「テレワークでも経理ができるようにする」
この段階で、みんなで話し合ってゴールをはっきりさせておかないと、「何のためにやっているの?」と現場が混乱し、反発につながる原因になります。
ステップ2:ソフトを選ぶ(約2ヶ月~3ヶ月)
世の中にはたくさんのクラウド会計ソフトがあります。このステップでは、立てた計画にぴったりのソフトを選びます。
選ぶときに大切なのは、「誰が使うか」という視点です。
- 簿記(会計の知識)に詳しくない人が使う場合:
- freee会計は簿記の専門用語を知らなくても直感的に使える画面が特徴です。まるで家計簿をつけるように簡単に入力できるので、経理専門外の担当者が使用することも想定した運用ができます。
※ただし、最終的な会計処理については会計処理に詳しい方や、税理士等の専門家のチェックが必須です。
- freee会計は簿記の専門用語を知らなくても直感的に使える画面が特徴です。まるで家計簿をつけるように簡単に入力できるので、経理専門外の担当者が使用することも想定した運用ができます。
- 簿記の知識がある人が使う場合:
- マネーフォワード クラウド会計は、昔ながらの会計ソフトに近い操作感なので、簿記の知識がある経理担当者にとっては使いやすいでしょう。給与計算などの人事労務の機能も充実しているので、バックオフィス業務をまとめて管理したい会社の要望にも対応できます。
カタログの機能だけでなく、実際に無料の体験利用をしてみて、使いやすさを確かめることが重要です。
ステップ3:初期設定を行う(約4ヶ月~6ヶ月)
選んだソフトを各会社の利用条件に合わせて整える作業です。ここでは、会社の基本情報や、お金の出し入れに使っている銀行口座やクレジットカードをソフトに登録します。
特に大事なのが、「期首残高」の設定です。これは、新しい会計年度の始めの時点での預金や借入金の金額を入力する作業です。加えて年度の途中で導入する場合は、期首から導入日までの取引を入力する必要があり、少し大変な作業になります。
ステップ4:過去データの引越しとテスト(約1ヶ月~3ヶ月)
古いデータ(過去の取引記録など)を新しいソフトに移行します。この時、古いデータの整理とバックアップを忘れないようにしましょう。
そして、いきなり本格的に使い始めるのではなく、新しいシステムと古いシステムをしばらくの間、両方同時に使ってみる「並行稼働」がおすすめです。この期間に、新しいソフトに慣れたり、問題がないかを確認したりします。
ステップ5:本格的な運用を開始する(約1ヶ月~2ヶ月)
テスト期間を終えて、問題がなければ、新しいクラウド会計を本格的に使い始めます。この時、みんなが迷わないように、新しい運用ルールをしっかりと決めておくことが大切です。
IV. クラウド会計導入を成功させるためのヒント
クラウド会計を最大限に活用し、失敗を避けるためのコツをいくつかご紹介します。
1. 導入するタイミングが大事
クラウド会計を導入する一番良いタイミングは、決算が終わった直後や、新しく事業を始める時です。この時期なら、過去のデータが整理されていて、新しい会計年度の初めから一貫した管理ができるので、引越しがスムーズに進みます。
2. 「手で入力する作業をなくす」という視点を持つ
クラウド会計の本当の強みは、銀行やクレジットカードと自動でつながって、取引記録を自動で取り込んでくれることです。
しかし、これまでの「紙のレシートを手で入力する」というやり方をそのまま続けてしまうと、せっかくの自動化機能がもったいないことになります。「仕事のやり方をソフトに合わせる」という考え方に変えることで、クラウド会計の便利さを最大限に活かすことができます。
3. 外部の専門家の力を借りる
ITの専門家や税理士のサポートを借りることも非常に有効です。
- 税理士やコンサルタント: ソフトの設定や古いデータの引越しだけでなく、導入後の運用の相談にも乗ってくれます。
- IT導入補助金: 中小企業や個人事業主は、「IT導入補助金」という国の制度を利用して、ソフトの利用料や関連費用を補助してもらえる可能性があります。これにより、お金の心配を減らして導入を進めることができます。
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V. 導入の失敗から学ぶ教訓:よくある落とし穴とその対策
クラウド会計導入でよくある失敗は、技術的な問題よりも、人間関係や計画の甘さが原因になることが多いです。
失敗1:トップダウンで一方的に導入してしまう
なぜ失敗する?
社長や一部の経営陣だけで導入を決めてしまい、現場の意見を聞かずに進めると、従業員は「面倒な仕事が増えた」と感じて反発し、結局誰も使わないシステムになってしまいます。
対策:
導入の目的をみんなにきちんと説明し、全員が「自分たちの仕事が楽になる!」と納得できるように話し合うことが大切です。
失敗2:Excelから抜け出せない
なぜ失敗する?
新しいソフトの使い方が複雑だったり、操作の練習が足りなかったりすると、「慣れているExcelの方が早い」と、結局前のやり方に戻ってしまいます。
対策:
導入前に無料のお試し版で使いやすさを確認し、導入後には操作方法を丁寧に教える時間をしっかり確保しましょう。
失敗3:他のシステムとうまく連携できない
なぜ失敗する?
販売管理や勤怠管理など、他のシステムとつなげる計画が甘いと、手作業でのデータのやり取りが必要になり、かえって手間が増えてしまうことがあります。
対策:
導入する前に、どのシステムと連携させるか、どうやってデータをつなげるかをしっかりと確認し、ベンダーと細かく打ち合わせをしておくことが重要です。
VI. まとめ:クラウド会計導入は「業務のアップデート」
クラウド会計の導入は、単に「会計ソフトを入れ替える」ことではなく、会社全体の「仕事のやり方」をアップデートする一大プロジェクトです。
このアップデートを成功させるには、以下の3つのポイントを忘れないでください。
- 目的をはっきりさせる: 「なぜやるのか」をみんなで共有し、具体的なゴールを決めましょう。
- やり方を変える勇気を持つ: 今までの非効率なやり方を捨て、ソフトの自動化機能に合わせて新しいやり方を考えましょう。
- みんなで協力する: 経営者だけでなく、現場の従業員、そして外部の専門家も巻き込み、チーム一丸となって取り組むことが成功への近道です。
クラウド会計は、日々の面倒な作業を減らし、会社の状態をリアルタイムで見えるようにしてくれます。これによって、経営者はより良い判断を早く下せるようになり、従業員はもっと大切な仕事に集中できるようになるでしょう。

セブンセンス株式会社
コンサルタント
【プロフィール】
2015年、セブンセンス株式会社に入社。 前職の会計ソフトベンダーにおけるシステム提案の経験を活かし、中小企業を中心としたバックオフィス業務の改善コンサルティングを担当。業務効率化やDX推進を支援する傍ら、デジタルマーケティング領域も管轄している。
freee、マネーフォワード、OBC、PCA、ソリマチなど、主要な会計ソフトベンダーの認定資格を多数保有しており、各社のシステムに精通した中立的な視点でのツール選定・導入支援に強みを持つ。





