「導入して後悔した…」クラウド会計ソフトでよくあるトラブルと失敗しないためのヒント
はじめに:クラウド会計導入で「後悔」する人が意外と多いのはなぜ?
最近よく耳にする「クラウド会計」。パソコンやスマホでいつでもどこでも会社の経理ができる、銀行口座やクレジットカードと自動で連携して面倒な入力作業が減る、といった便利なイメージがありますよね。
でも、いざ導入してみると「思っていたのと違う」「かえって仕事が増えた」と後悔してしまうケースが少なくありません。どうしてこんなことが起こるのでしょうか?
実は、クラウド会計の失敗は、ソフトの機能が悪いからではなく、導入する前の準備や、使ってみてから初めて気づく「落とし穴」が原因であることがほとんどです。
この記事では、クラウド会計の導入を考えているみなさんが「後悔」しないように、実際に起こりがちなトラブルを、具体的な解決策とあわせて解説します
第1章:導入前に知っておきたい!準備不足で起こる3つのトラブル
クラウド会計の失敗は、導入するソフトを選ぶ前に始まっていることが多いです。ここをしっかり押さえておきましょう。
1.1 目的がハッキリしないまま導入して、誰も使わなくなる
「なんか最近、みんなDX(デジタルトランスフォーメーション)って言ってるし、うちもとりあえず最新のシステムを入れよう!」という感じで、目的が曖昧なまま導入を進めてしまうことがあります。
すると、現場で実際に経理の仕事をしている人たちは、「また面倒な新しいツールが増えた…」と感じてしまい、せっかく導入したシステムが使われないまま放置されてしまうのです。
【解決策】
導入する前に、社長や経理担当者だけでなく、会社の全員で話し合って、「何のために導入するのか」という目的をハッキリさせることが大切です。例えば、「手書きの領収書をなくして、紙の書類を減らしたい」とか「会社の今の状況を、いつでもスマホで見られるようにしたい」など、具体的な目標を決めましょう。
1.2 ほかのシステムとつながらなくて、手作業が増えてしまう
クラウド会計ソフトは、会社の別のシステム(給料計算ソフトや販売管理ソフトなど)と自動でつなげて、仕事をラクにするのが得意です。でも、導入前にこの「連携」についてちゃんと確認しないと、逆に手間が増えることがあります。
たとえば、別のシステムからデータを出力して、そのデータを手で加工してからクラウド会計ソフトに入れる、という面倒な作業が発生してしまうこともあります。これでは、何のためにクラウド会計を導入したかわかりませんよね。
【解決策】
導入する前に、今使っているすべてのシステムとクラウド会計がちゃんと連携できるか、しっかりとチェックしましょう。もし連携できない場合は、その部分の作業がどれくらい増えるのかを考えて、それでもメリットがあるかを検討することが重要です。
1.3 担当者の人選ミスと、みんなが新しいやり方を嫌がる問題
「パソコンに詳しそうだから」という理由だけで、経理の仕事について詳しくない若い社員に導入を任せてしまうケースがあります。しかし、経理の専門知識がないと、現場の意見をうまくまとめられず、失敗につながりやすいです。
また、人間は新しい変化を嫌う生き物です。特に、ずっと同じやり方で仕事をしてきたベテラン社員にとっては、新しいシステムへの切り替えは大きなストレスになります。なぜシステムを変えるのか、どんな良いことがあるのかをちゃんと説明しないと、誰も使ってくれない、という事態に陥ってしまいます。
【解決策】
導入の担当者は、経理の知識があり、周りの人からも信頼されている人を選びましょう。そして、システム導入の目的やメリット、使い方などを、現場の社員に丁寧に説明する場を設けて、みんなで一緒に新しいシステムを使いこなせるようにすることが大切です。
第2章:使ってみてわかる!システムの使い勝手や機能のトラブル
導入準備がうまくいっても、実際に使ってみると、クラウド会計ならではの思わぬ問題に直面することがあります。
2.1 動作が遅くてイライラ…ネット環境がないと何もできない
クラウド会計は、インターネットにつながっているからこそ、どこでも使えるというメリットがあります。でも、インターネットの回線が遅かったり、接続が不安定だったりすると、データの読み込みや入力に時間がかかり、作業がスムーズに進まないことがあります 。
また、インターネットに繋がらない環境では、ソフト自体が使えなくなるという大きなデメリットもあります 。
【解決策】
安定したインターネット環境を整えることが必須です 。また、万が一サービスが停止してしまった場合に備えて、重要な経理業務が滞らないように、事前に「もしも」のときの計画(BCP)を立てておくことも重要です。
2.2 自動仕訳を信じすぎて、間違いに気づかない
銀行やクレジットカードと自動で連携してくれる機能は、クラウド会計の最大の魅力です。しかし、この機能を過信してしまうと、間違いに気づかないことがあります。
例えば、クラウド会計にはAIが自動で判断して勘定科目を振り分けてくれるという機能がありますが、AIが自動で判定する科目は「多くの企業で同様の取引で使用されているケースが多い」という科目です。銀行やクレジットカードから得られる不十分な情報のみでは、AIも正確な仕訳を提案してくれるわけではないのです。
また、これらの連携の方法によっては、同じ経費が二重に計上されてしまったりするミスが起こることが多くあります。ソフト側で条件を設定することで自動で検知するという機能もありますが、すべてが自動で行われるという認識でそういった機能を使用していないユーザーも多いというのが現状です。
【解決策】
自動で仕訳された内容を、定期的に人の目で確認することが大切です。経理担当者の仕事は、手入力を減らすことではなく、「AIが正しく仕訳できているかチェックする」ことに変わった、と考えるべきです。
2.3 データ移行でエラーが続出!インポートの壁
今使っているソフトやExcelから、クラウド会計にデータを移すときに、CSVファイルの形式が原因でデータがうまく取り込めないトラブルがよく起こります。
例えば、ファイルの中に余計な記号や改行が入っていたり、数字が半角で入力されていなかったりすると、エラーが発生してしまいます 。
【解決策】
ソフトによって、データの取り込みには独自のルールがあります。もしエラーが出たら、エラーメッセージをよく読んで、データファイルに間違いがないか確認しましょう 。
第3章:見落としがち!コストとセキュリティの落とし穴
「安くて安全」だと思っていたクラウド会計にも、注意すべき点があります。
3.1 月額料金の安さにだまされる?実は高くなるランニングコスト
クラウド会計は、買い切り型のソフトとは違い、毎月や毎年お金を払って利用するサービスです 。一見すると安く見えますが、長く使い続けると、買い切り型のソフトよりも合計の費用が高くなる可能性があります 。
また、「必要な機能が有料のオプションだった」「ユーザー数を増やしたら料金が上がった」といった、予想外の追加料金が発生することもあります。
【解決策】
導入する前に、月々の料金だけでなく、将来的にかかるかもしれない追加費用や、それによってどれくらい仕事がラクになって人件費が減らせるか、という点も含めて、総合的にコストを計算してみましょう 。
3.2 会社の機密情報が流出する?セキュリティへの不安
クラウド会計のデータは、銀行と同じくらい厳重なセキュリティで守られています 。だからといって、絶対に安全というわけではありません 。
特に危険なのは、ソフトの提供側ではなく、使う側(会社)が原因で情報が漏れてしまうケースです 。たとえば、アクセス権限を間違えて設定してしまったり、社員のIDやパスワードが盗まれたりすると、重大な情報漏洩につながる可能性があります 。
【解決策】
クラウド会計は、ソフトの提供者と使う側が協力してセキュリティを守る「責任共有モデル」という考え方が基本です。会社の社員一人ひとりがセキュリティについて意識を持ち、誰がどこまで見られるか(アクセス権限)をきちんと管理することが非常に重要です 。
➡クラウド会計の導入に不安を感じたら、クラウド会計無料相談センターをご利用ください。
第4章:人の問題!経理担当者や税理士との連携トラブル
クラウド会計は、経理の仕事だけでなく、それに関わる人たちの役割も変えていきます。
4.1 簿記の知識がある人ほど、新しい操作に戸惑う
簿記の勉強をしっかりしてきた人や、昔ながらの会計ソフトに慣れている人ほど、クラウド会計ソフトの独特な操作方法に戸惑うことがあります 。
例えば、freee会計では、銀行の明細を元に「取引」として処理する考え方が基本で、これは「仕訳伝票」から入力する従来のやり方とは全く違います。
【解決策】
新しいソフトの導入は、新しいやり方を学ぶチャンスだと考えましょう。操作方法に慣れるまでは時間がかかるかもしれませんが、無料のお試し期間などを活用して、事前に操作性を確認してみるのがおすすめです 。
4.2 顧問税理士が「クラウド会計はよくわからない」と言われたら?
長年付き合っている顧問税理士がクラウド会計に対応しておらず、データのやり取りがうまくいかないことがあります 。
また、「自動で全部やってくれるなら、税理士は必要ないんじゃない?」と思う人もいるかもしれませんが、これは危険な考え方です 。なぜなら、前述したようにAIは間違いを犯す可能性があり、確定申告の最終的な責任は納税者自身にあるからです 。
【解決策】
クラウド会計を導入する前に、顧問税理士に相談して、対応可能かどうか確認しましょう 。もし対応していない場合は、クラウド会計に詳しい税理士を探すことも一つの手です。これからの時代、税理士は記帳代行だけでなく、会社の経営についてのアドバイスなど、より高度なサポートをしてくれる存在になります 。
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まとめ:後悔しないための「チェックリスト」
クラウド会計の導入を成功させるには、ソフトの機能だけでなく、「会社全体」で取り組むことが大切です。以下のチェックリストを活用して、トラブルを未然に防ぎましょう。
| 導入前 | |
| 経営層と現場で導入の目的をハッキリと共有したか。 | |
| 今使っているほかのシステムと、新しく入れるソフトがちゃんと連携できるか確認したか。 | |
| 経理の知識がある人が導入担当者になったか。 | |
| 選ぶとき | |
| 月額料金だけでなく、将来的な追加費用も含めて、合計の費用を計算したか。 | |
| 会社に本当に必要な機能がそろっているか。 | |
| 無料のお試し版などで、実際に操作してみて使いやすいか確かめたか。 | |
| 使うとき | |
| ネット回線は安定しているか 。 | |
| 自動で仕訳された内容を、人の目で定期的にチェックする仕組みを決めたか。 | |
| 社内で誰がどこまで使えるか(アクセス権限)を細かく設定したか。 | |
| 顧問税理士がクラウド会計に対応しているか確認したか。 | |
クラウド会計は、経理の仕事を劇的に効率化してくれる便利なツールです。しかし、ただ導入するだけでは、かえって「後悔」することになりかねません。この記事が、みなさんがクラウド会計導入を成功させるためのヒントになれば幸いです。

セブンセンス株式会社
コンサルタント
【プロフィール】
2015年、セブンセンス株式会社に入社。 前職の会計ソフトベンダーにおけるシステム提案の経験を活かし、中小企業を中心としたバックオフィス業務の改善コンサルティングを担当。業務効率化やDX推進を支援する傍ら、デジタルマーケティング領域も管轄している。
freee、マネーフォワード、OBC、PCA、ソリマチなど、主要な会計ソフトベンダーの認定資格を多数保有しており、各社のシステムに精通した中立的な視点でのツール選定・導入支援に強みを持つ。





