基礎控除・給与所得控除改正で激変!確定申告で「損しない」ための重要ポイント徹底解説
2025年分、つまり令和7年分の確定申告からは、基礎控除や所得控除を中心に大幅な見直しが行われます。この改正により、「去年と同じやり方でいいの?」「私の控除額はいくらになるの?」と不安を感じている事業主の方も多いのではないでしょうか。
特に今年は、控除の段階的引き上げや所得区分の整理など、見た目以上に複雑な改正が多く含まれています。
そこでこのコラムでは、セブンセンスグループの税理士監修のもと、確定申告に直結する重要ポイントを中心に整理してお伝えします。
改正概要の紹介
まずは、今回の税制改正全体の方向性を教えてください。
はい。2025年の改正は、「働き方に中立な税制」への転換を目的としています。
つまり、「会社員・個人事業主・パートなど、どんな形で働いても不公平がない仕組み」に近づけようというものです。
その中で、特に注目すべき主なポイントは次の4つです。
- 基礎控除の引き上げと段階制の導入
- 給与 所得控除の拡大
- 所得区分(事業所得・雑所得)
- 特定親族特別控除の創設
これらはいずれも、所得の状況に応じた「公平な課税」を目指す改正です。つまり、「低所得者層にはより大きな控除を」「所得の把握をより正確に」という方向です。
なるほど。公平性を保つために、細かく調整された制度ということですね。
その通りです。ただし裏を返せば、「仕組みが細かく複雑になった」とも言えます。そこで、ここからは確定申告に直接影響するポイントを順に見ていきましょう。
1.基礎控除の段階的引き上げ
まずは今回の改正の中心となる「基礎控除」について教えてください。
はい。基礎控除とは、すべての納税者に適用される基本的な控除で、
「最低限の生活を守るために課税しない金額」を指します。
これまでの基礎控除額は一律48万円でしたが、2025年分の所得税からは最大で95万円に引き上げられます。
ただし、全員が95万円になるわけではなく、所得に応じて控除額が5段階に分かれる「段階制」が導入されました。132万円を超えると88万円 さらに336万円を超えると68万円…と、段階的に減少します。
【基礎控除額】

なるほど。所得が低い人ほど控除が大きくなる仕組みですね。
その通りです。
この仕組みは、所得が低い方ほど税負担を軽くする狙いがあります。
一方で、申告時には自分の「合計所得金額」を正確に把握しておかないと、本来より少ない控除しか受けられない可能性もあります。
たとえば、経費の計上漏れや帳簿の不備があると、合計所得金額が実際より多くなってしまい、控除額が一段階下がるケースも起こり得ます。
確定申告の正確さが、控除額に直結するわけですね。
はい。まさにその通りです。
また、この段階的な基礎控除は2025年と2026年の2年間限定の特例で、令和7・8年分(2025・2026年分)の加算措置は暫定です。令和9年分(2027年分)以後は原則58万円に整理されます。
ですので、2025年・2026年の申告では、「自分の所得がどの段階にあたるのか」を確認することが非常に重要です。
2.給与所得控除の拡大
次に「給与所得控除」についても、改正の影響を教えてください。
これまで給与所得控除は、年間の給与収入が162万5,000円以下の方が55万円の控除でした。
2025年からは、その下限が190万円以下で65万円の控除に引き上げられます。つまり、会社員やパート勤務の方の税負担が軽くなり、結果的に「課税のスタートライン」が上がることになります。
ということは、収入が同じでも、手元に残る金額が増えるということですね。
その通りです
この改正によって、給与所得者の方は、より多くの控除を受けられるようになります。
そして実は、この「給与所得控除の拡大」は、個人事業主の皆さんにも間接的に関係するんです。というのも、個人事業主の方のご家族…たとえば配偶者やお子さんが給与収入を得ている場合、その方の所得控除額が変わることで、「扶養に入れるかどうか」の判定が変わる可能性があるからです。
なるほど。家族の収入や働き方によっても影響が出てくるということですね。
はい。たとえば、これまで「103万円の壁」と呼ばれていたラインが、今回の改正で「123万円の壁」に変わります。
さらに、
ここは【給与所得を例にした場合】ですが、基礎控除95万円と給与所得控除65万円が適用されるため、年収160万円までは所得税がかかりません。
※ただし住民税は別途判定され、課税される場合があります
なるほど。160万円というのは給与収入が前提なんですね。
そうなんです。給与以外の所得だと給与所得控除がありませんので、同じ「壁」でもラインは下がります。このあたりは勘違いが多いので、働き方や所得の種類を踏まえて判断する必要があります。
「壁」が上がるのはうれしい変化ですね。ただ、控除の仕組みを正しく理解していないと、判断を誤ってしまいそうです。
おっしゃるとおりです。給与所得控除が拡大すると、これに連動して「配偶者控除」や「配偶者特別控除」の対象範囲も広がります。
これまで、配偶者の年収が103万円を超えると配偶者控除は受けられませんでしたが、2025年からは (給与所得を前提に)年収123万円まで が配偶者控除の対象になります。
さらに、配偶者特別控除については、従来よりも幅広い範囲で満額(38万円)が適用されるようになります。配偶者特別控除は 配偶者の合計所得金額が58万円超~95万円以下 の場合に満額となり、これを給与収入に換算すると123万円超~160万円以下となります。
このように、扶養のラインが全体的に引き上がるため、これまで「扶養を外れないように」と収入を抑えていたご家庭でも、以前より収入の上限を気にせず働けるようになるメリットが生まれます。
とはいえ、税金の仕組み以外にも、社会保険の扶養など関係する制度がありますよね?
その通りです。
ここが重要なポイントです。今回の改正で「所得税上の扶養の壁」は上がりますが、社会保険の扶養基準は変わっていません。
社会保険の扶養判定では、収入が106万円を超えると勤務先で社会保険加入の対象になる場合がある130万円を超えると、配偶者の扶養から外れるという基準が従来通り適用されます。
ですから、「税金では扶養のままだけど、社会保険では外れる」というケースもあり得るわけです。この点を混同してしまうと、手取り額がかえって減ってしまうこともあります。
なるほど…。税金と社会保険、それぞれの基準が違うということを意識しておく必要があるわけですね。
その通りです。
特に個人事業主の方は、ご自身の申告だけでなく、ご家族の収入も確認しておくことが重要です。たとえば、奥様がパート勤務で103万円を少し超えた場合でも、もう「扶養から外れる」と決めつけずに、改正後の控除範囲を確認しておくことで、控除を最大限に活用できる可能性があります。
給与所得控除と基礎控除、どちらも引き上げられることで、「課税のスタートライン」自体が上がるということですよね?
はい。今回の改正では、給与所得控除と基礎控除が両方引き上げられたため、合計で非課税となるラインが広がった形になります。
一方で、控除額の段階制が導入されたことで、「前年と同じ収入でも税額が微妙に変わる」といったケースもあり得ます。ですから、前年の申告データをそのまま流用してしまうと、控除額が古いままで誤った計算になる恐れがあります。
確定申告の際には、最新版の控除額をしっかり確認しておく必要があるんですね。
まさにその通りです。
今回の改正は“負担を減らす”方向の改正ではありますが、制度が細かくなった分、確認作業がこれまで以上に大切になります。
- 扶養の範囲
- 配偶者の年収
- 最新の控除額
この3つを正しく把握しておくことが、正確な申告につながります。
3.所得区分 (事業所得 ・ 雑所得) の整理
続いてのテーマは、「所得区分の整理」ですね。今回の改正では、事業所得と雑所得の線引きが見直されたと聞きますが、この違いを意識することがなぜ大切なのでしょうか?
はい、非常に重要なポイントです。
近年の通達により事業所得と業務に係る雑所得の線引きが明確化され、2025年の申告でも同じ考え方が適用されます。
これは、副業やフリーランスとしての活動が増えたことを背景に、“どこからが事業とみなされるのか”を整理するための見直しです。
例えば──
- 毎月継続して仕事を請け、請求書を発行しているフリーランスのデザイナーやライター
- 小規模でも仕入れ ・ 販売を繰り返して利益を出しているネットショップ運営者
- 業務委託契約を結び、報酬を得ている個人事業主
これらは原則として「事業所得」に該当します。
なぜなら、反復継続して取引を行い、独立して収益を上げる活動だからです。
一方で、次のようなケースは「雑所得」として扱われる可能性が高くなります。
- 知人から単発で依頼を請け、1回だけ原稿を書いた
- フリマアプリやオークションで不要品を不定期に売却した
- 趣味で作ったアクセサリーを、数点だけ友人に販売した
これらは、営利性や継続性が認めにくいため、税務上は事業ではなく“臨時的な所得”として扱われるのです。
なるほど。帳簿をつけているかどうかが大きな分かれ目になりそうです。
そうですね。
帳簿を備え付けていないと、雑所得扱いとなり、青色申告特別控除(最大65万円)が受けられません。つまり、同じ収入でも、帳簿を整えているかどうかで税額が大きく変わるということです。また、帳簿をつけている場合は、赤字を翌年以降3年間繰り越せる「損失の繰越控除」も使えます。一方、雑所得ではそれもできません。
まとめると、「帳簿を正しくつけている人が有利になる」制度になっています。
したがって、青色申告をする方は、日々の取引を丁寧に記録しておくことが欠かせません。
4.特定親族特別控除の見直し
最後は、「特定親族特別控除」の見直しについてです。
この控除は新設に近い形で2025年から導入されると聞きましたが、どんな制度なのでしょうか?
はい、これは非常に重要な改正です。
簡単に言うと、「19歳以上23歳未満の子どもや親族を持つ世帯の税負担を軽くする」ために設けられた新しい仕組みです。学生アルバイトなどを想定していただくと分かりやすいですね。
これまでは、大学生などのお子さんがアルバイトで年収103万円を超えると、親御さんが「特定扶養控除(63万円)」を受けられなくなるという“崖”のような仕組みでした。ほんの少し超えただけで控除がゼロになってしまうため、学生が「これ以上働けない」「調整しなきゃ」と考える原因になっていたんです。
確かに、“103万円の壁”という言葉はよく耳にします。それが解消されるということですね?
そうなんです。
新たな「特定親族特別控除」では、この“崖”を“坂”に変えるような仕組みになっています。
例えば──お子さんの給与収入が150万円以下であれば、従来と同じように63万円の控除が受けられます。そこから収入が増えるごとに控除額が少しずつ下がっていき、188万円を超えると控除がなくなる、という段階的な減額方式です。
つまり、働く時間を増やしても、いきなり税負担が増えることはなくなる。学生にとっても親にとっても、安心して働ける仕組みになったわけです。
なるほど。では、この控除の対象となるのは、どんな人ですか?
はい。対象は…
- 19歳以上23歳未満の親族(大学生など)
- 親や納税者と生計を一にしていること
- その親族の合計所得金額が58万円超〜123万円以下
という条件に当てはまる方です。
分かりやすく言えば、「大学に通いながらアルバイトをしているお子さん」が典型的な対象になります。
たとえば、お子さんがアルバイトで 給与収入110万円(すなわち所得に換算すると55万円) を得ている場合、従来制度では親は特定扶養控除をまったく受けられませんでした。
しかし、新制度では控除が段階的に減る仕組みになっているため、給与収入150万円(所得に換算して85万円)を得ている場合でも、特定親族特別控除の満額63万円が認められます。
このように、働く時間や収入に応じて控除額がゆるやかに変動する “坂型” の設計になっているのが特徴です。
控除額が段階的に変わるというのは、親御さんにとってもありがたいですね。申告のときは、どんな点に注意すればいいでしょうか?
ここが実務上の注意ポイントです。
① 所得の見積もりは早めに確認すること。
年末調整や確定申告の直前になって慌てると、正確な金額が分からないことがあります。学生アルバイトの方は、勤務先から「給与支払明細」や「支払見込書」をもらって、早い段階で年間見込みを算出しておきましょう。
② 生計を一にしているかの確認。
下宿や一人暮らしの場合でも、仕送りや生活費の援助があれば対象になりますが、完全に独立して生活していると判断されると対象外になることがあります。
確かに、親御さん側での確認が重要になりそうですね。お子さんの収入状況をしっかり把握しておかないと、控除が受けられない可能性もありますね。
おっしゃる通りです。
また、この制度が適用されることで、親の所得控除が変わるだけでなく、お子さん自身の税金にも影響が出ることがあります。
たとえば、アルバイト収入が160万円を超えると、お子さん本人にも所得税が課税される可能性があります。そのため、家族全体で「誰がどれだけ税負担を負うのが最も有利か」を考えることも大切です。
家庭全体のバランスで考える、というのは確かに大事ですね。では、個人事業主の方にとっては、この控除改正をどう受け止めると良いでしょうか?
はい、個人事業主の方にも関係があります。
たとえば、事業を手伝っているお子さんがアルバイトもしている場合、どちらの収入がどの所得区分に当たるかを整理しておくことが重要です。
また、扶養控除や特定親族特別控除は、所得金額に応じて自動で切り替わるものではありません。確定申告の際に、正しく区分し、正しい控除額を選択する必要があります。誤って古い様式で提出したり、申告書の記載を省略してしまうと、控除が適用されないまま課税されることもあるため注意が必要です。
なるほど。制度が複雑になった分、「どの扶養控除が適用されるのか」を見極める作業が大切なんですね。
その通りです。
今回の見直しは「働く世帯を支援する」という方向性ですが、実務ではその分、確認すべき書類や判断が増えます。
ですから、
- どの親族が対象か
- 所得見積もりはいくらか
- 記入書類に誤りがないか
これらを、申告の1か月前には整理しておくことをおすすめします。
そうすることで、控除漏れや修正申告といったトラブルを防げます。
ありがとうございます。“働き方の自由を支援する改正”である一方、正しく活用するには早めの準備が欠かせないということがよく分かりました。
まさにその通りです。
制度の趣旨は「働く世帯を守る」ことですが、その恩恵を受けるためには、私たち自身が正確に理解して活用することが大切です。
詳細は国税庁のHPを必ずご確認ください。https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025004-025.pdf
まとめ
ここまで、2025年分の確定申告に関わる改正ポイントを解説していただきました。最後に、視聴者の皆さんへアドバイスをお願いします。
はい。今回の改正は、控除額が増える一方で、
「段階制」「新様式」など、制度が複雑になっています。
特に個人事業主の方は、
所得の把握・帳簿の管理・控除の確認の3つを早めに進めておくことが大切です。
申告直前になって慌てるのではなく、
年内のうちに帳簿を整理し、控除の段階を確認しておくことで、
より正確でスムーズな申告ができるでしょう。

セブンセンス株式会社
コンサルタント
【プロフィール】
2015年、セブンセンス株式会社に入社。 前職の会計ソフトベンダーにおけるシステム提案の経験を活かし、中小企業を中心としたバックオフィス業務の改善コンサルティングを担当。業務効率化やDX推進を支援する傍ら、デジタルマーケティング領域も管轄している。
freee、マネーフォワード、OBC、PCA、ソリマチなど、主要な会計ソフトベンダーの認定資格を多数保有しており、各社のシステムに精通した中立的な視点でのツール選定・導入支援に強みを持つ。


